
「SESはやめとけ」という言葉をWeb上でよく見かけます。
しかし、この言葉が生まれた文脈を調べると、ほぼすべてがエンジニア(働く側)に向けた話です。
多重下請け構造の中で働かされる・スキルが身につかない・単価が上がらない——これらはエンジニア自身のキャリア問題であり、SESに人材を発注する企業側の話とは根本的に異なります。
一方で、発注側にも「SESで失敗した」という声は実際に存在します。ただしその原因の多くは、SESという仕組み自体の問題ではなく、会社選びと発注の仕方に問題があったケースがほとんどです。
本記事では、「やめとけ」言説の本当の意味を整理したうえで、発注側が陥りやすい失敗パターン・SESを使うべき場面・失敗しない選び方を、SES支援の現場視点から解説します。
社内でSES活用の是非を議論している方・過去に失敗して慎重になっている方・初めてSES発注を検討している方に、特に参考にしていただける内容です。
「SESはやめとけ」はエンジニア側の話
まず前提として、「SESはやめとけ」という言説がどこから来ているのかを整理します。
この言葉が広まった背景には、SES業界の多重下請け構造があります。元請け→二次請け→三次請けとなる中で、エンジニアに支払われる単価が中間マージンで大幅に削られ、働く環境や待遇に問題が生じるケースがあります。また、客先常駐が続くことでスキルの幅が広がらず、キャリアアップが難しいという指摘もあります。
これらはエンジニア自身のキャリア・労働環境に関する問題であり、「SESに人材を発注する立場の企業」とは直接関係しません。
発注側にとってSESは「必要なスキルを持つ人材を、必要な期間だけ確保できる仕組み」です。この仕組み自体に本質的な欠陥はなく、問題が起きるとすれば選び方と使い方の問題です。
ただし、「エンジニア側に問題がある業者」から人材を調達してしまうと、スキルの低い人材が来たり、途中退場が起きたりするリスクは確かにあります。だからこそSES会社の選び方が重要になります。
発注側が「SESで失敗する」5つのパターン
SES発注で失敗する企業に共通する原因は、大きく5つに分類できます。いずれも仕組みの問題ではなく、発注プロセスの問題です。
① スキルシートと実力が乖離していた
SES発注でもっとも多いクレームが「スキルシートに書いてあることと、実際の現場でのパフォーマンスが違う」というものです。
スキルシートには「Java 5年」「要件定義経験あり」と書かれていても、その内訳は様々です。5年のうち3年が保守改修のみだったり、「要件定義に参加した」だけで主担当ではなかったりするケースがあります。
対策:面談では過去の担当範囲を具体的に深掘りしましょう。「そのプロジェクトで自分が決めたことは何か」「チームで何人いてどのポジションだったか」といった質問が、スキルシートの裏側を見極めるのに有効です。また、SES会社側に「この人材はこの役割を担えるか」と明示的に確認することも重要です。
② 単価だけで選んで現場が機能しなかった
「コストを抑えたい」という理由で単価の安い人材を選んだ結果、現場で自走できず、既存メンバーのフォロー工数が増えてかえってコストが上がった——これはSES発注において典型的な失敗パターンです。
月額60万円の人材にPMレベルの動きを期待すれば当然ミスマッチが生まれます。逆に、月額100万円以上の上級人材を単純な実装作業に充てても、コスト効率は悪くなります。
対策:単価と期待役割を事前にすり合わせることが不可欠です。「この単価でどこまでの動きを期待できるか」をSES会社に明示的に確認し、曖昧なまま発注しないことが重要です。料金の目安についてはSES料金相場の職種別解説記事も参考にしてください。
③ 要件が曖昧なまま発注してミスマッチが起きた
「エンジニアが欲しい」という状態のまま発注すると、SES会社側も適切な候補者を選べません。「何をする人が必要か」ではなく「何を解決したいか」から整理することが、ミスマッチを防ぐ最大のポイントです。
例えば「開発が遅れているので人を増やしたい」という場合、本当に必要なのは実装要員なのか、進捗管理ができるPMOなのか、要件整理ができるSEなのかで、適切な人材は全く異なります。
対策:発注前に「このプロジェクトで今一番困っていることは何か」「それを解決するために必要な役割は何か」を整理してから相談しましょう。要件が固まっていない状態でも相談できるSES会社を選ぶことも重要です。O-lineでは要件整理の段階からご支援しています。
④ SES会社との連携が取れず途中退場になった
参画後のコミュニケーションが不足し、エンジニアが現場に馴染めないまま途中退場になるケースがあります。この原因の多くは、参画前の期待値のすり合わせ不足と、参画後の定期的な状況確認の欠如にあります。
「お願いして終わり」ではなく、参画後も定期的にSES会社と連携を取り、問題が大きくなる前に対処できる体制を作ることが重要です。
対策:SES会社との間で定期的な状況共有の場(月次ミーティングなど)を設けましょう。また、契約前にアフターフォローの体制を確認することも有効です。
⑤ 緊急発注で選択肢が絞られ質を妥協した
「エンジニアが急に辞めた」「プロジェクト開始まで1週間しかない」という緊急事態での発注は、候補者の選択肢が絞られ、本来の基準より低いスキルの人材を受け入れざるを得ないリスクがあります。
緊急性が高いほど、SES会社側も「今動ける人材」の中から提案せざるを得なくなります。結果として「選ぶ余地がなかった」という状況が生まれます。
対策:「少し余裕があるときに相談する」習慣を作ることが、最大のリスクヘッジです。問題が顕在化してからではなく、「なんとなく人手が足りなくなりそう」という段階で相談することで、候補者の選択肢が格段に広がります。O-lineでは最短即日〜3営業日での候補者提案も可能です。詳しくはSESでエンジニアを即日調達する方法をご覧ください。
それでもSESを使うべき場面はこれだ
失敗パターンを理解したうえで、SESが特に有効に機能する場面を整理します。 以下のいずれかに該当する場合、SESは採用・外注と比べて優位性があります。
エンジニアの急な退職・欠員補充
開発担当が突然退職した場合、採用活動では最低でも1〜3ヶ月かかります。SESであれば要件によっては数日〜1週間で参画できる可能性があります。プロジェクトを止めないための緊急手段として、SESは最も現実的な選択肢のひとつです。
開発遅延・炎上プロジェクトの立て直し
スケジュールが大幅に遅延しているプロジェクトに対して、PMOや上流SEを外部から投入することで立て直しが可能なケースがあります。社内リソースだけで対処しようとすると、対処が遅れてさらに悪化するリスクがあります。
O-lineが支援した製造業のDXプロジェクトでは、外部PMOの投入によって遅延していたシステム開発が半年で巻き返しました。→製造業DX事例:遅延プロジェクトの立て直し
DX推進・AI導入を上流から動かしたい
「DXを進めたいが社内に推進できる人材がいない」「AIを導入したいが何から始めればいいかわからない」という場合、戦略立案から実装まで対応できるAI/DX人材をSESで確保することが有効です。
採用コストをかけずに即戦力が必要
正社員採用では求人費用・選考期間・入社後の定着まで含めると、1人あたり数百万円のコストがかかるケースもあります。SESであれば必要なスキルを持つ人材を、必要な期間だけ確保できるため、コストコントロールがしやすくなります。特にプロジェクト単位でエンジニアが必要な場合に有効です。
情シス・IT部門の人手が足りない
社内の情報システム部門が慢性的に不足しており、DX・AI導入の新規施策に手が回らないという企業は少なくありません。SESでIT人材を補強することで、既存業務を維持しながら新規施策を並行して進めることが可能になります。
SESで失敗しないための3つの選び方
「やめとけ」と言われる背景にある失敗の多くは、SES会社の選び方で防げます。以下の3点を発注前に確認しましょう。
① 提案スピードと透明性で会社を見極める
問い合わせから候補者提案までのスピードは、そのSES会社の候補者プールの質と広さを示す指標です。「2週間後に提案します」という会社より「3営業日以内に提案できます」という会社のほうが、当然選択肢が広い可能性が高いです。
また、提案時に「なぜこの人材を推薦するのか」を説明できる会社かどうかも重要です。スキルシートを渡すだけで根拠を説明できないSES会社は、候補者の実力を自社でも把握できていない可能性があります。
② 面談の設計を一緒に考えてくれるか
良いSES会社は「面談で何を確認すればいいか」をアドバイスしてくれます。「面談は自由にどうぞ」と丸投げする会社より、「この人材のここを深掘りしてください」と具体的に案内できる会社のほうが、候補者理解が深い証拠です。
面談は採用の場であると同時に、SES会社の質を見極める場でもあります。
③ 参画後のフォロー体制を確認する
「発注して終わり」ではなく、参画後に問題が起きたときの対応体制があるかどうかを確認しましょう。定期的な状況確認、人材交代が必要になった場合の対応、スキルミスマッチが起きた場合の責任範囲など、契約前に明確にしておくことが重要です。
O-lineがSES支援で意識していること
「やめとけ」と言われる背景には、多重下請け構造によるエンジニアへの待遇問題があります。O-lineでは、そのような構造とは一線を画した支援を行っています。
候補者の実力を自社で把握したうえで提案する
スキルシートを転送するだけでなく、候補者の実際の担当範囲・得意領域・コミュニケーションの傾向まで把握したうえで提案しています。「なぜこの人材を推薦するのか」を説明できることが、ミスマッチを防ぐ最大の要因だと考えています。
要件が固まっていない状態からの相談に対応する
「何が必要かわからないが、プロジェクトがうまくいっていない」という状態からでも相談を受け付けています。現状のプロジェクト課題を整理し、「どのような人材を、どのフェーズから投入すべきか」の要件定義から一緒に行います。
PM・PMO・AI/DX人材など上流人材の提案が強み
O-lineは、開発エンジニアだけでなく、PM・PMO・上流SE・AI/DX人材など、プロジェクトの上流から関与できる人材の調達に強みがあります。炎上案件の立て直し・DX推進・情シス強化など、単なる人員補充ではなく課題解決として人材を活用したい場合にご相談ください。
よくある質問
Q. SESとフリーランス活用はどちらがリスクが低いですか?
目的によって異なります。フリーランスは専門性の高い人材を直接活用しやすく、中間コストが抑えられる反面、契約管理・継続性の確保・急な離脱への対応はすべて発注側が担う必要があります。SESは企業間契約のため、人材交代や体制の組み換えをSES会社に相談しやすく、プロジェクトの安定性を重視する場合に向いています。長期・複数名・管理が必要な案件はSES、短期・単発・専門スキル特化はフリーランスが適するケースが多いです。
Q. SESは短期間の案件でも依頼できますか?
可能です。ただし1ヶ月未満の非常に短期な案件は候補者が限られる場合があります。一般的には3ヶ月以上の参画期間を想定した案件のほうが候補者の選択肢が広くなります。短期案件の場合は、その旨を最初に伝えたうえで相談することをお勧めします。
Q. SESで失敗した経験があります。再チャレンジすべきですか?
過去の失敗の原因を整理することが先決です。スキルミスマッチなのか、要件の曖昧さなのか、SES会社の質の問題なのかによって、次回の対策が変わります。O-lineでは過去に失敗した経緯をお聞きしたうえで、同じ失敗が起きないよう要件整理から対応することも可能です。まずはご相談ください。
Q. 小規模なプロジェクトでもSESは使えますか?
はい。1名からの参画でも対応可能です。大規模プロジェクト向けというイメージを持たれることがありますが、中小企業の情シス補強・スポット的な開発支援・DX推進の初期フェーズなど、小規模な活用実績も多くあります。
Q. SESとSIerの違いは何ですか?
SIer(システムインテグレーター)は、システム開発を成果物として請け負う契約形態が中心です。一方SESは、エンジニアの労働力を提供する準委任契約が基本で、作業の指揮命令は発注側が行います。SIerは「システムを作ってもらう」、SESは「エンジニアと一緒に作る」イメージに近いです。
Q. PMOだけをSESで依頼することはできますか?
できます。O-lineではPMO単体での参画も対応しています。開発体制はあるがプロジェクト管理が弱い・炎上案件を立て直したい・複数ベンダーのコントロールが難しいという場合に特に有効です。→O-lineのPMO支援
まとめ|「SESはやめとけ」は発注側には当てはまらない。ただし選び方は重要
「SESはやめとけ」という言葉はエンジニアのキャリア文脈から生まれたものであり、SESに人材を発注する企業側の話ではありません。
ただし発注側にも、選び方と使い方を間違えることで失敗するリスクは存在します。その原因の多くは以下の5つです。
- スキルシートと実力の乖離を見抜けなかった
- 単価だけで選んで現場が機能しなかった
- 要件が曖昧なままミスマッチが起きた
- 参画後のコミュニケーション不足で途中退場になった
- 緊急発注で選択肢が絞られ質を妥協した
これらはすべて、正しい知識と適切なSES会社を選ぶことで防げます。
株式会社O-lineでは、要件整理の段階から相談できるSES支援を提供しています。「何が必要かわからない」「過去に失敗した」「急いでいる」いずれの状況でも対応可能です。まずはお気軽にご相談ください。
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株式会社O-line創業者・COO / 尚美学園大学 芸術情報学部・准教授。
中小企業の売上向上・業務効率化を支援する専門家。
共同通信グループ、株式会社コアコンセプト・テクノロジー、株式会社インテージでの経験を活かし、
企業PR・AI業務改善・DX支援・Webマーケティング支援を行う。
AI導入支援、業務自動化、DXコンサルティング、企業および官公庁/自治体ブランディングを得意とする。
YouTube登録者約3万人超、MusicVideo再生回数115万回の実績あり。
海外でも注目を集める日本民謡テクノユニット「LOWBORN SOUNDSYSTEM」リーダーとしても活動。
関西テレビ「千原ジュニアの座王」「ロザンのクイズの神様・超」などのED曲を担当。
主催イベント「ギリギリシティ」は21年間で150回以上を記録。
中小企業から上場企業まで幅広く支援実績あり。
本サイトの記事は古澤彰が監修しています。